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『性』は私たちのアイデンティティ:越智沙霧さん

Updated: May 28, 2023


 


越智さぎりさん

<プロフィール> 越智彩霧(おちさぎり)

米国セックスコーチ協会認定コーチ

心理カウンセラー


スペインのコーチング協会認定資格を取得後、2010年よりコーチとしての活動をスタート。2015年より日本語でのコーチングにシフトし、自信がない…というお悩みを解消するためのコーチングをスタート。 その後、国際結婚や恋愛のパートナーシップのご相談や、バルセロナの 不妊治療クリニックでの長年の医療通訳&コーディネーターとしての経験から、セクシュアリティについて興味を持つ。 米国のセックスコーチの産みの親の元、日本人初のセックスコーチとして認定を受け活動を続ける。 セルフケアとしてのセクシャルウェルネスやプレジャーについてホリスティックに学ぶ、Holistic Sexual Wellness Academy(オンライン)を主宰。電子書籍「お母さんも子どもも自分らしい幸せを叶える魔法の性教育」著者。


 

ーさぎりさんは今スペインのバルセロナにお住まいですよね!スペイン、私の大好きな国なので憧れます!さぎりさんがスペインにお住まいになるまでの経緯はどんな感じだったのでしょうか?


はい、今はバルセロナで、スペイン人の夫と、娘&息子の4人で暮らしています。


きっかけは、大学の英米文学科に在籍中に、20歳でアメリカのニュージャージー州に短期留学したことから始まります。そこでスペイン人の女の子と仲良くなったのですが、その子の実家がバルセロナから車で1時間くらいのところにあったんです。留学が終わって日本に帰ってからも、彼女と文通や国際電話で連絡を取り合っていました。それが、スペインとつながりができた最初のきっかけです。


その後、大学を卒業後に新卒で働き始めたのですが、実は1年もせずに体を壊して会社をやめてしまったんです。しばらくは家で養生していたのですが、めまいなどの症状が治らず、すぐに次の仕事を探し始められる状態ではなくて…


そんな時に、母親が「スペインの友達のところに遊びに行ってきたら?」と言ってくれたんです。友達も喜んでくれて、夏の間1ヶ月くらい彼女の実家に滞在させてもらうことになりました。そこは、バルセロナの隣の県で、海岸沿いの街だったのですが、「もう、絶対ここに住みたい!」と思うくらい素敵な場所でした。


その時は、「夏だけじゃなく、他の季節も見てみたいな〜。」と名残惜しさもありつつ帰国したのですが、帰国後には就職が決まったり、ボーイフレンドができたりして、スペイン移住のことがなんとなく気になりながらも、また段々と日本での生活が当たり前になっていきました。


その後も常にスペインのことは頭の片隅にあって、「とりあえず、スペイン語くらいは習っておこう。」と、25歳くらいから習い始めたのは良いのですが、「今の生活に不自由はないし、どうやって実現していいかわからないから怖くて動けない。」という状態が続いていて、気がついたら、スペインに行ってからすでに6年ほどが経過していました。


「もう30歳も目の前なのに、語学留学という目的だけで永住しては食べていけなさそう…」という心配もあって、「仕事につながるような何かをしたいな。」と思っていました。そんな時、たまたま、スペインの商工会議所、大学、そしてビジネスクールが提携して国際貿易を学ぶというコースの広告を見つけたんです。でも、その時にはすでに、応募期限がとっくに切れていたんです。それまでの私だったら「もうこれは期限が過ぎてるから絶対無理だな。」って諦めていたと思うんですけど、なぜかその時は「期限が切れてるけど、聞くだけ聞いてみよう!」と思って、直接問い合わせたんですよ。そうしたら、「まだ大丈夫ですよ!」ってすぐに連絡が来て、とんとん拍子に話が進んで、そこからパカっと道がひらけた感じでした。




スペインの自然

スペインの自然
彩霧さんが滞在していたスペイン、ジローナ県の自然風景



ーえー、すごいですね!それは、きっと、本当にご縁があったっということですよね。ENVITAの『EN』の部分にも、日本語のご縁とか円、宴、の意味を込めているので、そのご縁のお話もっと聞きたいです!


本当に、ご縁は『宝もの』だと思います。そのコースのビジネスディレクターも、卒業してからそれきり何年も会っていなかったのですが、実はこの前、たまたま息子の通っている学校でばったり再会したんです!なんと、お子さんが同じ学校に通われていたんですよ〜。その時やっぱり、「あ、ご縁がある人っているんだな。」って思いましたね。




ーそうなんですよね。私とさぎりさんとの出会いは、数年前に私が不妊治療をしていたときに遡のぼるのですが、さぎりさんがスペインの不妊クリニックで通訳として働かれていたご経験があったからこそ、出会うきっかけになったわけで。それもやっぱり、すごいご縁だな、と思うわけです。


本当に、たくさん妊活の発信をされている方がいらっしゃる中で、スペインの私と、オーストラリアの香織さんが繋がれるのって、すごいですよね。オンラインでのつながりも、私は本当に素敵な方との出会いがたくさんあって、恵まれているな、と思っています。




ーでは、次に、その不妊治療クリニックのお話を少し聞かせていただけますか?国際貿易のコースから、どういう経緯でそこに繋がったのかも知りたいです!


私がスペインに行った時がちょうどリーマンショックの時期で、貿易のコースを卒業してからも全然仕事がなかったんですよ(苦笑)日本では失業率8%を超えたら大騒ぎになるくらいだと思うのですが、当時スペインでは若者の50%が失業しているというひどい状態でした。


そうなると、政府はまず雇用を活性化させるために、ローカルの人材を雇用するし、外国人であっても、すでにワーキングビザを持っている人が優先されるわけです。

でも私は学生ビザで滞在していて、しかもそのビザも後1ヶ月で切れちゃう、みたいな状態になっちゃったんです。貯金もすでに200ユーロぐらいしかなくて、帰りの航空券も買えない、学生ビザの更新目的で新しいコースに申し込むのも無理、みたいな八方塞がりの状態で。深夜3時に「もう、どうしよう〜。」ってパソコンの画面の前で半泣き状態。


私が日本で最後にしていた仕事って、実は法律事務所の秘書だったので、その時に、もうダメ元で『バルセロナ、弁護士事務所』ってGoogleで日本語検索してみたんです。そうしたら、なんと、スペイン人の方だけど、奥様が日本人で、日本語ができる弁護士の方の事務所が見つかって。そこに連絡したらビザサポートも全て含めて雇ってくれるってことに決まったんですよ〜。



ーさぎりさんの強運というか、ぎりぎりの時に最強カードを引き寄せちゃう力が凄過ぎますね(笑)じゃあ、その弁護士事務所から不妊治療クリニックへの変化は?



そこの弁護士事務所では秘書として2年間働きました。

その後、不妊治療クリニックでマーケティングをやっていた友達が、患者さんをサポートするためのコーチを探していて、その時にちょうど「コーチングやっていきたいな。」と思っていた時期だったので、面接を受けに行ったんです。


うまくことが運び採用されたのは良かったのですが、蓋を開けてみたら、コーチのはずがクリニックの中で日本語を話す人のための部署を立ち上げて欲しいと言われて。



ーへ〜。そのスペインのクリニックに来られる日本人の方って多かったんですか?


いや、その時はそれほど多くはなかったんですけど、ヨーロッパの他の国に住んでいらっしゃる日本人の方も来られたりしていました。スペインでは、不妊治療関連の法律がかなりちゃんと整備されていますし、代理母出産以外は、日本ではできない治療もできるので、それに期待されて来られる方をもっと増やしたいというクリニック側の意図もあったのかもしれません。


そこで、ウェブサイトや書類の翻訳から、日本語のサポートサービスまでを担当することになりました。それまで普通にスペイン語で生活はできていましたけど、医療の世界で働いたこともなかったし、不妊治療のことなんて全く知らなかったので、翻訳をしながら1から勉強する感じでした。今でこそGoogleで何でも検索できますけど、当時は毎日電子辞書を持ち歩いていて、エクセルでMy辞典ができるくらい新しい言葉を学びましたね。


その後6年間はそのクリニックで働き、また別のクリニックで同じような日本語での事業開発を担当しました。合計で11年ほど、不妊治療のエリアでどっぷり仕事をすることになりました。




ーなるほど〜。では、その不妊治療クリニックでの経験が、今のセックスコーチのお仕事につながるきっかけになったんでしょうか?


セックスコーチになるきっかけは2つあって、その一つはまさにその不妊治療クリニックでの経験からですね。


私自身、不妊治療について学ぶ前は、自分の生殖機能について全く知らなかったということに気がついたんです。自分自身もそうだったんですが、多くの治療に来られる女性が「生理があったらいつでも妊娠できるでしょ?」という間違った認識を持たれていたり、自分の生殖器の機能や、子宮や卵巣などの生殖器の場所なども分かっていないとか、クリニックに来られるまで婦人科検診さえ受けたことがない人も多いという状況を目の当たりにしました。


でも、自分のことを大事にしていないというよりは、『大事にしないといけないことさえ知らない』という感じかも。若い人だけでなく40代の大人の女性であっても、セクシャル&リプロダクティブヘルス(性や生殖機能の健康)について知識がない、知らない、という方がとても多い状況に驚いて、「これってまずくない?」と思い始めました。




ー本当にそうなんですよね。私自身も、子どもが生まれることは、健康体であれば普通の事って若い時は思っていたんですけど、自分自身で不妊治療を経験してみて、「これは全然普通の事じゃないんだ。」って実感しましたね。



そうなんですよね。

実は私も、一人目を妊娠した時に8週間で流産してしまったんです。


私自身もクリニックでたくさんのケースを見てきて、知識としてもあったはずなのに、自分ごとになった時に初めて、「あ、妊娠して出産するってこんなに難しい事なんだ。」と、難しさを肌で感じました。頭では分かっていたはずなのに、自分が経験することで本当に身に染みて自分ごととして実感したんです。赤ちゃんは欲しいと思っていたけど、その経験からショックでなかなか立ち直れず、妊活も全然考えられなくなってその後1年ぐらいはお休みしました。




ーうん、わかります。私も、自分が不妊治療し始めて勉強するまでは、流産がこんなに高い割合で起こることを知らなかったですもん。(※検査で妊娠陽性反応がでても出ても20〜25%は妊娠初期に流産するという統計があります。)でも、その経験もセンシティブなことだから表立って話す人が少ないし、だから自分の身に起こった時に「まさか私が。」ってびっくりしちゃうっていうね。



そうなんですよね。流産はみんなが思うよりよくあることなのに、知識があった私でさえ「私が〇〇したせいかな。」「あの時〇〇を食べてしまったからかな。」とか、全部自分のせいにして自分を責める思考に陥ってしまって。ドクターに「自然って良くできていて、染色体の異常とかがあるとそういう受精卵は育たないようになってるんだよ。」と説明されて、頭ではわかるんだけど、「やっぱり私のせいかも。」という思考から抜けられなくなってしまって、辛かったですね。




ー私の場合もそうだったんですげど、不妊治療の経験をするまでは「なんでも自分でコントロールできる。」みたいな意識があったと思うんです。「夢が叶うかどうかは自分の頑張り次第」というような教育を受けてきて、妊娠&出産に関してもそんなイメージを最初持っていたので、逆にいうと、「できないのは自分のせいだ。」ってなっちゃうというか。


そう、自分のせいじゃないんです。

そこのところは、本当に自分のことを責めないでほしいですね。


セックスコーチになったもう1つの理由は、コーチングを仕事にしていく中で、最初は自己肯定感、そのあとはパートナーシップにフォーカスをしてサポートをしてきましたが、そこから自然な流れでセクシャルなご相談も多くなり、妊活のご相談なども受けることが増えたことによって、プロとしてのサポートをしていくには私自身が性について学ばなくてはいけない、学びたい!と思ったことでした。




ーなるほど、過去のご経験や周りからの需要などもあり、自然な流れでそうなったということですね。話は変わりますが、私の場合は海外でのキャリアを優先する30代前半でしたが、「女性なら30歳が結婚適齢期」「35歳までに結婚できないと売れ残り」など、結婚するまでにも年齢のことで色々言われ、さらに結婚したら「子どもはいつ?」一人生まれたら「一人っ子はかわいそうだよ?」など、周りからの言葉にモヤモヤしたり傷つくこともありました。さぎりさんは、このような結婚、妊娠&出産などの女性を取り巻く環境についてどのようにお考えでしょうか?


それ、私自身も経験しましたよ。「30代目前にして海外行ってる場合じゃないだろ、パートナーを見つけて結婚しろ。」などとおじいちゃんとか親戚のおじちゃんに言われたりしてましたよ(笑)


その時は、「そういうのは一人でできることじゃないから〜。」とさらっと流してはいましたけどね。言われていい気持ちはしないですよね。


言ってる人は悪気があるわけではないし、その人自身が生まれ育ってきた中での価値観で言ってるわけだけど、これからは『妊娠、出産などをするしない、は個人の自由だし選択権がある』という認識をもっと当たり前にしていかないといけないと思っています。


「多様性を大事にしよう!」って言うのは簡単だと思うけど、やっぱり何が大切かっていうと、教育だと思うんですよ。小さい頃からの教育も大切だし、大人になってからも、情報をどのように取捨選択しに行くか?というスキルも今の日本ではまだまだ欠けている気がします。 実はスペインも1975年までは独裁政治だったので、結構性教育に関しては遅れているんですよ。その頃まではセンサーシップ(情報検閲)が強かったので、独裁政権が倒れた後には上半身裸の女性がやたら映画とかテレビに出てくるとか、変な意味での女性の解放運動とかあったのですが、本当に大切な性教育に関しては遅れていますね。




ー女性の性的役割って、本来『見た目のセクシーさ』みたいなとは別のところにあるはずですよね?なのに、世の中にはまだまだ、「可愛くなければ価値がない」というような見た目と自己価値の歪みみたいなものがある気がします。


今の時代は、男性とか女性だけを区別するのも遅れていると言われるくらい、多様性が認識される時代になっていると思います。でも、まだまだ『若くて見た目の美しい女性が価値がある』という考え方は男性にも女性にも根強くあるのでは?と思っています。特に、SNSでフィルターをかけて『理想』の顔に修正した顔の写真を持って、「この通りに整形してほしい。」と病院を訪れる10代の若者のニュースとかを聞くと、胸が痛いし、どこまで自分への価値が捻じ曲がってしまうのかな?と心配になります。


もちろん大人になってからでも認識を変えられるとは思いますが、やはり小さい頃からの積み重ねがとても大切だと思っています。


私は40歳になってから歯列矯正をしたのですが、子どもの時にやってたら1年ぐらいで済んだものが、私の場合3年くらいかかったんです。人間の思い込みとか、思考や行動の癖もそれと同じだな〜、と。





ー我が家も性教育は結構小さい頃から始めて、3歳ぐらいから、ママのお腹に赤ちゃんのお部屋があるとか、どうやって生まれてきたとか伝えていますけど「ヘ〜。」って感じです。子どもの方は全く先入観なくスッと受け入れてくれる感じですよ。


そうなんですよね。

大人の方が持っている価値観を子どもに教えているだけで、元から子どもが「30歳で結婚してなかったら負け組」とか「性は汚い」「恥ずかしいこと」とか思っているわけじゃないじゃないですか?


それに、性教育を通じて生命の神秘をシェアしあえるのって、すごく素敵な時間じゃないですか?「何億もある精子の中のたった一つが卵子と出会って、赤ちゃんの元になるんだよ。だからあなたたちはものすごい確率でここに生まれてきてくれてるんだよ。」っていう話をすると、「すごいね〜!」って本当に目をキラッキラさせて聞いてくれます。いつも子どもたちには「あなたたちはママの宝物だし、本当に来てくれてありがとうね。」っ言っています。



ー素敵なエピソードですね!ところで、さぎりさんのお仕事である『セックスコーチ』は、その名前のインパクトもあると思いますが、特に日本では受け入れられないというか、誤解されている部分もあると思います。


男性と思われる人から変なメッセージが送られてくることもありますけどね。最初はいちいち怒っていたんですけど、今は「時間があるんだな〜。そんなに暇なら私にくれないかな〜。」って思ってます。 『セクシャルアウェアネス・コーチ』とか、他の言葉も使えるのかもしれないですけど、直球で言ってる理由は、もうこれからは、セックスという言葉をタブーにしたくないな、という思いを込めて、あえて使っています。SNSとかは自分の母親も見ているし、最初は躊躇したんですけど、『セックスはいやらしい、いけないこと』というイメージをここで断ち切りたい!と勇気を出しました。


それに、私はアメリカの認定資格を持っているのですが、そこでは普通に『セックスコーチ』なのに、日本だからって変えなければいけないのは変だな、って。

まあ、それによって色々センサーされてしまうこともあるのでデメリットもあるんですけどね。




なるほど。確かにアウェアネスを高めるにはインパクトがある方がいいのかもしれませんね。実際にはどのようなお仕事で、どんな思いでされているのか教えてください。


一言で言うと、『大人の女性向け性教育』ですね。自分の体や性について正しい情報に触れる機会を提供しています。

今まで耳にしてきたことでも正しくない情報はたくさんあるので、それをアップデートして、自分の『性の健康』をちゃんとケアしたいと思える人を増やしたいと思って活動しています。


そこにプラスして、子どもたちも「自分で自分の性を大事にすることが当たり前」って思えるように、お母さんたちから子どもたちに伝えられるような形で、性の情報をシェアしたりしています。その一環として、去年の12月には電子書籍を出版しました。日本語では『包括的性教育』って言い方をするんですけど、ただ『性』だけのことを勉強するだけではなくて、性を取り巻く『自己肯定感』『合意』『リレーションシップ』などの様々な問題に取り組んでいくことを含めての『性教育』をお伝えしています。



カンファレンス
日本で行われたカンファレンス『幸せなセックスの話』で登壇された彩霧さん


ー私の頃の性教育なんて、学校で男女別々の部屋に呼ばれて、どうやって生殖が行われるか?みたいな機能的なことを一回聞いただけでしたね。女性の生殖器系の病気って、実際すごく多いし、ひどい生理痛があることは普通じゃないのに、大人になるまでそのことさえも全然知らなかったですし、本当に自分の体のことについて知らなさすぎだったと反省もします。『性教育=もっと自分のことを大切にする』って言う視点が増えたら、定期的に検診に行ったりして、未然に大きな病気を防ぐことにもつながることになると思います。


自分の性のことについてちゃんと理解することは、健康的に過ごすために、食事に気をつけたり、エクササイズをするのと全く同じことなんですよね。でも、「なんだか話してはいけないこと。」のように思っていたら「まあ、生活できてるし大丈夫だろう。」と先延ばしにしてしまうことも多いと思います。経産婦であっても、はっきり言って婦人科検診はそんなに気持ちのいいものではないですよ。だけど、やっぱり、1年に一回は検診に行くべきだ、と小さい頃からの教育で促すべきだと思います。


今までの性教育では『生理が来る=子どもを産むための準備ができること』だと教えられることが多いと思いますが、生理が来ても、『いつ、何人、子どもを産むか?または産まない選択をするか?』はパートナーと話し合って(もしくは一人で)決めていくことが大事なんだよ、と教えることを性教育に入れていかなければならないと思います。


でも、いくら医学が発展していても、やはり女性は子どもを持てる生物学的なタイムリミットが男性よりも短いので、そこも踏まえた上で、妊娠&出産をしたいのであれば、自分のキャリアの選択や、いつ産むのか?などを合わせて考えていく必要があるということも伝えていかなければいけないと思っています。


自分らしく、自分の人生に責任を持てる決断をしていくためには、やはり必要な情報をきちんと知ることが重要ですよね。


『35歳くらいで女性の生殖機能はガクッと下がってくる』という事実を知っていれば、32歳ぐらいからパートナーと話し合って妊活を始める決断ができるかもしれないし、でも、その時はまだキャリアに専念したいけど、できるなら40歳くらいで産めるなら産んでみたいな、と思っているなら30歳ぐらいで卵子を凍結するという選択もあるかもしれない。医学的介入をするかどうかに関しては、人によって様々な意見があるとは思いますが、オプションを知っていないとその決断さえもできませんよね。




ー日本では最近やっと、『性教育』をもっと小さい頃から行うことのメリットとか、『性』を隠すべきものと捉える考え方に変化が見られる気がしていますが、まだまだ欧米に比べると女性の『性』、特にプレジャーに関して公に語ることにタブーを感じる風潮もあると思います。そのような点で、日本の女性たちができること、また、男性に考えていただきたいことはどんなことでしょうか?

『プレジャー(喜び)』というのは、人としての権利なんですよ。

誰もが「幸せになりたい。」と思う権利があるのと同じことで、「性的にプレジャーを感じたい。」と思ってもいいんですよ。


でも、今まではあまりにもそれを女性が考えることが「いけないこと」「はしたない」「いかがわしい」「淫乱」みたいな絶対あり得ない、考えるものではない、っていうふうに思われてきたところなんですよね。私のところに来てくださる方の中にも「絶対こういうことを学んでいるなんて知られたくない!」というふうに思う女性も多くて、私が思っている以上に、性に対する高い壁を持っていらっしゃる方が多いんだな、と思っています。


でも、実際はWHOでも、そこを追求していくことが、自分達のセクシャルウェルネスでもあるんだよ、とちゃんと定義されているんですよ。


まずは、プレジャーを感じること自体に罪悪感を感じている女性がすごく多い状況なので、そこを変えていきたいんです。パートナーに与えてもらおうという意識ではなく、自分で自分にプレジャーを与えていいんですよということを、当たり前にしていきたい。


そうすると、自分にフォーカスしたセクシャルウェルネスを実現していけるし、そうやって自分自身の性を丸ごと肯定できるようになると、性教育に自然と繋がっていきますよね。「性は怖いものじゃなくて素敵なものなんだよ。」って心から伝えられるようになりますから。


ー近年では、『ジェンダー』についてもさまざまな状況の変化が世界的に見られますし、日本でもジェンダーの多様性に対応するための法案などが話し合われています。でも、『性』の多様性に関してはあまり触れられていない気がします。解は一つではないと思いますし、人それぞれだとは思いますが、さぎりさんご自身はこのような性やジェンダーの多様性に関してどのようにお考えですか?

ジェンダーは性的アイデンティティの大事な部分だけど、性っていうのはもっとさらに踏み込んだところにあるんだと思うんですよ。例えばレズビアンのカップルがいても、その方達の性生活がオープンになるわけでないですよね?


本当にいろんなテーマが絡み込んでいるんだと思うんですけど、『セックス』の定義自体も

画一的なイメージしかないと思うんです。

女性も全然楽しくもないのに我慢したり、逆に男性がバイアグラ使って頑張ってみたり。お互い全然好きじゃないことを、『セックスってこういうもの』という画一的なイメージの中で空回りしているというか。


あとは、『セックス』の話はしないけど『セックスレスは良くない』っていう話はよく出ますよね?


セックスレスの定義も一応あるのはあるんですけど、(※)本質的なところの蓋を開けないまま、セックスの話をしようと思うから、頻度とか回数とか、そういう表面的な部分での話になってしまうとおもうんです。でも、3ヶ月に1回でも、1年に1回でも、当事者がいいと思って、幸せであればそれでいいんじゃない?って思いませんか?


日本性科学会の定義は、「特殊な事情が認められないにもかかわらず、カップルの合意した性交、あるいはセクシュアル・コンタクトが1か月以上なく、その後も長期に渡ることが予想される場合、セックスレス・カップルのカテゴリーに入る」とされています。




ーそうですよね。性的な関係性というのはパートナーシップの一部なのに、それだけを人間関係の評価の基準にするのは変だと感じます。


元々、性への興味関心の具合やモチベーションなども人それぞれ幅があるものなのに、『月に1回以下はセックスレス』と決めてしまったら、生きにくくなる人が増えると思うんですよね。最終的には、「自分の体のことであって、自分がいいと思えればそれでいい。」と思えたらいいんじゃないかな、と思いますよ。


それと、やっぱり正しい知識を持つことは大事だと思います。




ーやっぱり、周りの情報に振り回されてしまうと、自分にとっての正しい決断ってできない気がしますしね。


パートナーが誘ってくれるのが普通だと思っていたら、自分から誘うということもダメだと思ってしまうかもしれないですしね。でも、自分の健康に関することだからこそ、いろんな性のあり方を知っておくこと、相手に丸投げするんじゃなくて、自分の中に何が揃っていたら幸せだと感じるのか?などに向き合って、ちゃんと把握しようとすることが大切だと思います。


だって、「アウトドア派?インドア派?」とか「どんな色が好き?」「どんな食べ物が好き?」って聞かれたら自分で分かるじゃないですか?それと同じで、自分自身の性に関心を持ち自分の性の心地よさをコントロールすることはしていっていいことなんです。




ーまずは「性はいけないこと」という固定概念を外すことからってことですよね。


そうですね。それは、きっと、みんなが正しい知識を知ることによって、変えていけると思います。私自身も、人の健康を推進しているWHOの定義に『自分達の性的な経験が、よりプレジャーに満ちたものになるように追求していっていい』って書かれているのを最初聞いた時はびっくりしたのですが、「あ、いいんだな。」って。


エロティシズムとかは、人それぞれお好みもあるので、エンターテイメント要素としてあっても良いものだとは思いますけど、性をそれだけと捉えてしまうのは違いますよね。




ーこれから、より女性としてのウェルネスを実現しながらより良い人生を送るために、このインタビューを読んでいる方にアドバイスできることやメッセージをお願いします。


性のことに向き合うって勇気がいると思いますが、そこに向き合ってあげられるのって自分しかいないと思うんですよね。向き合わず蓋をしたままでも毎日過ごしていけるけど、自分の人生にスポットライトを当てながら、人生を愛しみ輝かせていきたい時に、性は無視できない要素だと思います。


色々な人とお話をしてみて思うのは、『どういうところでその情報に触れていくのか』が大切だと思います。たくさん性の発信をされている方がいらっしゃると思うので、私じゃなくてもいいので、皆さんそれぞれが「この人のこの表現が好き!」という方で、正しい情報を発信している人を見つけて、少しづつで良いので性の話をしていくことを当たり前にしていってほしいな、と思います。


大人がそうできることで、子どもたちにとっての『普通』の基準が変えていけると思うし、自分達の性を当たり前に大切にできる未来を切り開いていくお手伝いをしていけると思います。


このインタビューを読んでいただくことによって、「ひょっとして、性ってすごく素敵なことなのかもしれない。」と思ってもらえると嬉しいし、ご自身が自分の性をしっかり大切にしていただけたらいいなと思います。




ー自分を大切にするって色々な方法がありますけど、性の部分って難しいと思ってる人が一番多いところかな、と思います。でも、そこまで辿り着けたら、表面的なことではなくて本当に深いところから自分を受け入れられるんじゃないかな、と思います。


セルフラブの方法も様々ありますが、やはり性に関わる部分って私たちのアイデンティティなんですよね。スムージー飲んでたり、クリーンイーティング(クリーンな食生活)を実践している人って、健康に気を遣っててかっこいい!みたいな風潮もあるじゃないですか?そんな感じで、どんどん性が自分ごとになって、ヘルスコンシャスな人はみんな性のこと真面目に考えてるぜ!そんな人がいけてる!ってふうになっていくといいな、と思っています。




 

編集後記


さぎりさんとのインタビューで『セックス』って何回言ったでしょうか?笑

それくらい、性の話をするのは普通のことなんですよね。

私もたくさんお聞きしたいことがあったし、読んでいる方に知ってほしい大切な内容もたくさんありました。


さぎりさんは、見た目はとても可愛らしくピュアな印象だけど、心の奥底に激しい情熱を秘めた女性だと感じています。初めてお会いした時から(とは言っても実際にお会いしたことはなくオンライン上でのつながりですが)、真面目に、真摯に物事に取り組まれる姿勢が、まっすぐすぎて眩しいくらい。


性に関しては、いまだに堂々とは発信しにくいテーマで、だからこそ、心無い人や面倒な人からのメッセージに悩まされたり、インスタやせっかく作り上げた講座のページがバン(禁止)されたりして心が挫けそうになったことも何度もあると思います。


でも、それでもこのテーマを伝え続けていきたいという情熱があるのは、多くの女性や子どもたちが、心から自分を受け入れることを願ってやまれないからだと思います。


そんなさぎりさんのオンライン講座はこちらから受講できます。

学んでいることを誰にも知られたくない、という方もいらっしゃると思いますが、完全オンラインで自分のペースでご受講できるそうですので、気になる方は是非覗いてみてくださいね。



ENVITA編集部


 

<ENVITAの最新情報が週に2回メールボックスに届きます> ウェルビーイングに興味があっても、忙しい中で心を休め、

自分のために時間を取る習慣をつけるのはなかなか大変ですよね? そんなウェルビーイングの習慣を身につけ、

こなさなければならない作業の合間にも少しでもホッとする時間や

心身を整えるヒントをお届けしていきます。






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