top of page

子どもたちは生まれた時からパーフェクト:川口由佳子さん


 

<プロフィール> 川口由佳子

海外幼児教育専門家


オーストラリアで幼児教育学を専攻後、シンガポールに移住。子どもの可能性や感性を引き出す世界で最も優れた幼児教育法として国際的に注目されるレッジョエミリア・アプローチを取り入れたインターナショナルスクールに勤務。世界26カ国から集う子どもたち、家族、先生達との関わりを持つ。


2018年よりシンガポール発自然派育児をしたいママを応援するMothers’ Earth Communityにて、3年間で、全25回の講座を開講、のべ245名のママ・パパへ子どもとのコミュニケーションについて伝える。

現在はオンラインを中心に「色とりどりの生き方を育む 世界基準のカラフル子育て」を講座やプログラムを通して伝えている。


 

ー由佳子さんは幼児教育の先生としてインターナショナルスクールで長年働かれていましたね。その後ご自身もお母さんになって、今は子育て中のお母さん向けに講座をしていらっしゃいます。今やっていることについて簡単に説明していただけませんか?


はい。海外幼児教育専門家として、『子育て中のママの世界をもっとカラフルに』というコンセプトで、子どもとのコミュニケーションのヒントやママたちの心や思考の状態を整えるための発信や『ママ革命』という講座を定期的に開催しています。




ーなるほど。子育ての世界が『カラフル』になるって、由佳子さんの中では具体的にはどんなイメージなんですか?


人間って本当にいろんな側面があるじゃないですか?子どもたちにもいろんな面があって、その子達らしさはそれぞれ違います。色には、赤とか黄色とか明るい色もあるけど、紺とか茶色とか黒とかの暗い色もあって、人の内側もそれと同じだと思うんです。でも、暗いからダメっていうことではなく、それぞれの色はどれもユニークで素敵ですよね。そんなふうに、全ての面を、いい悪いでジャッジせずに丸ごと受け入れていくような考えかたができるといいなと思っています。


それは、子どもたちのいろいろな個性を受け入れるということでもあるし、お母さん自身が自分自身の個性や周りとの違いを受け入れるということも含まれています。そうやって、色とりどり、つまり自分と周りの人たちの多様性を受け入れて、より楽しく前向きな気持ちで過ごせる状態が理想だなと思っています。


『ママ革命』(※由佳子さんの主催する講座)の受講生さんから「子どもとの関係や会話がカラフルになった。」というご感想もいただいたことがあるんですよ。2年前くらいに、自分の中でなんとなく『色とりどりの私』というキーワードで色々考えていた時期があったんですけど、講座のご感想や受講者さんの変化を通じて、その時に自分が書いたものを改めて見てみたら、「あ、こういうことをやりたかったんだな。」って実感しました。


これまで私が学び実践してきた、『レッジョ・エミリア』という幼児教育アプローチがあるのですが、世界で最も優れた幼児教育法ということで注目をされています。その教育概念の中では、『子どもを人として丸ごと受け入れる、尊重する』ということを徹底して行います。


それもあって、いろんな違いをそのまま受け入れることを『カラフル』という言葉で表現することが、今私の中ではしっくりきています。




ー確かに「多様性を尊重しましょう。」って言われるよりは、「いろんな色があっていいんだよ。」って言われる方が全てを受け入れやすい気がします。そんな世界が実現できたら、なんだか楽しそうだし、みんなが優しい気持ちになれそうですよね!


『カラフル』という言葉を使うことで、個人個人の多様性という部分以外にも、自分自身が感じる感情や感覚も多様であって、それをそのまま受け入れてもいいというメッセージも一緒に伝わればいいいな、と思っています。『カラフル』という言葉を聞くと、ウキウキやワクワクなどの楽しい感情も感じませんか?


人生どん底で「全くモノクロで色彩なんてありません!」という状況の人だけが対象な訳ではなく、今の状況にある程度満足していたとしてもやっぱりイライラすることもあるし、割と幸せだけど後一つ何かが足りないと思うこともあると思います。なので、今の状況より少しでも彩度や明度を上げていくとか、色の種類を足していくというようなイメージ。個人の好みで、パステルでもビビッドでもいいから、今よりももっといろんな色を自分の中に取り入れていってもいいんだって思ってもらえたらいいかな。



Asian woman talking in a seminar
お母さんたちに講座を開催されている由佳子さん


ー確かに、色は無限にありますからね。そう聞くと、何を取り入れてもいいんだって思えてきます。ところで、由佳子さんはお子さんを産む前から幼児教育のプロとして働かれていましたが、3回の出産&子育て経験を通じて、ご自身の学んできた幼児教育の考え方に変化はありましたか?


そうですね…幼児教育に対する考えがガラッと変わったいうよりも、『子育てと幼児教育は別物である』とより強く感じました。

幼児教育は他人のお子さんを預ってプロとしてやっていることなんですよね。もちろん、自分が持っている知識を、自分の子どもに対して使えることはあるけど、自分の子育ては『教育』ではなく『自分と同等またはそれ以上に大切にしたいと思う存在』に対して、どんなふうに関係を築いていきたいのか?を考える『人間関係構築のプロセス』なんだと思っています。親子としてのつながりがあるからこそ、一人目を出産して子育てしている時に、幼児教育の知識だけだと何かが足りないな、と思ったことも事実です。


でも、もちろん、幼児教育を子育ての知識として活かしていくことができないか?というと全くそんなことはなくて。むしろ、知っていることで活かしていけることもすごくあると思います。子育てって、すごく感情が揺れ動く経験だと私は感じていて。その感情の揺れに対して、知識のベースがあると冷静に判断できることも多いと思います。




ー由佳子さんが実践されるレッジョ・エミリアについてご存じない方も多いかと思います。どんな教育概念なのですか?それと、由佳子さんの講座の中ではそれをどのように生かされているのでしょう?


従来の『教育法』のイメージだと、子どものスキルや成績を伸ばすことが目的で、それを達成するためにどんなアプローチをするか?という感じですよね。でも、その『従来の教育』をお母さん自身が完璧にやろうとすると「自分がなんとかしなくちゃ。」「良い子に育てなくちゃ。」と苦しくなってしまうのだと思います。それは、自分達が育ってくる中で受けてきた教育のイメージでもあるし、それしか知らないからだと思うんですけど。


でも、そもそも、そんな考え方がどこからきているのか?を考えてみなければならないと思います。


従来の教育法の前提って『子どもは何もできない存在だから大人が教えなければいけない』ということじゃないかなと思うんですが、それに対して、レッジョ・エミリアでは、『子どもは生まれた瞬間から可能性に溢れた存在で、自分の意志がある、すでにその子らしさがある、コミュニケーションを取りたいと思っている存在だ。』という風に考えるんですね。


「〇〇が足りていないからこういうふうになって欲しい。」とか「〇〇ができないからこれをしてあげよう。」と思ってしまうのは、そもそも子どもに対して『不足している』というイメージで見ているからで、それがその人の思考や言動に繋がっていると思います。その人の子どもに対するアプローチが、大前提での『子ども』に対するイメージで決まってくるので、私の講座では、そこをシフトしていけるようサポートしています。


もちろん、幼児教育の知識としてのコミュニケーションの方法とか、困った時の対処法とかもお伝えはしていますが、そもそも、どういうふうに子どもを見るかは、自分に対するセルフイメージにも繋がってくると思うんです。子どもの可能性を信じられるということは、つまり人間の可能性も信じるということですしね。



Asian woman smiling in Italy
イタリアに研修に行かれた時の由佳子さん


ーレッジョ・エミリアの哲学には、すごく共感するところがあります!でも、今まで子どもに対して『足りない』目線で見てきた方にとっては、本当にそんな力があるのかすぐには信じられないんじゃないかな、と思うんですが…由佳子さんがご自身のお子さんや生徒さんから感じたエピソードなどあれば教えていただきたいです


そうですね。私は『子どもは生まれた瞬間からコミュニケーションを取りたいと思っている生き物だ』と考えているので、まずは子どもの反応をよく見ることをお伝えしています。例えば、生後2ヶ月ぐらいの子が指しゃぶりをしていて「指しゃぶりをやめたらおっぱいあげるよ〜。」と言葉で伝えてしばらく待っていると、時間がかかるけどちゃんと伝わって指しゃぶりをやめてくれるんですよ。


言葉が喋れない2歳児の担任もたくさんしてきましたが、「あなたはコミュニケーション取ることが好きだよね。」とか「つながりたいと思っているよね。」と思って接していると、言葉は喋れずとも相手と意思が通じ合えるものです。


感覚的にわからないという人にとっては、何を見ていくのか?という具体的な方法を知らないだけだと思うので、どのように子どもたちの反応を見ていくのか、キャッチしていくのかの方法はお伝えしています。その練習をしていくと、だんだんと子どもたちの可能性を体感できるエピソードが増え、より子どもたちの力を信じられるようになってくるのではないかと思います。




ーお話を伺っていて、由佳子さんの子どもたちに対する情熱と愛をすごく感じるのですが、なぜそこまで『子ども』にこだわるのですか?幼児教育の勉強を始められたのはまだ10代の時ですよね?


そうです、幼児教育の勉強を始めたのは大学生からですね。

実は、私は元々人には興味あるけど、子どもがめちゃくちゃ好きってわけではないんですよ。

でも、幼児教育に興味を持ったきっかけは、中2の時の職業体験で幼稚園に5日間行ったことだったんです。その他には、スーパーのレジ、役場、図書館、ケーキ屋さん、お花屋さん、消防署などの選択肢があったんですけど、その時は直感で「楽しそう!」と思うことを選びました。私の選択基準は割といつも「楽しそう!」なんですよね。


私は幼少期に少しカナダにいたことがあるので、大学進学の際には英語を使える学科がいいなと思って考えたんですけど…英文科?外国語学部?に行ってその後どんな仕事をするのかな、って。言語を極めることには興味がないし、翻訳家とかって全然面白そうと思えなかった。栄養学も興味があったけど、私はかなり文系だったので、理系っぽいのは無理だな、とか(笑)その時に「昔幼児教育やってみた時面白かったな。」と思い出して、英語で幼児教育を学んでみよう!と海外の大学で学ぶことにしました。


幸運なことに私が出会ったレッジョ・エミリアのアプローチは、先生が子どもに教えるという教育方法ではなく、先生が子どもを観察しながらできることを一緒にリサーチしていくという立ち位置なので、すごく楽しかったですね。


今のお仕事をするようになったのは、お友達が、私がまだ言葉も話せない生後6ヶ月の自分の娘に語りかけている姿を見て、「子どもとの関わり方を教えて!」と言われたのがきっかけです。最初は「私に何が伝えられるのかな?」と思ったけど、大人に伝えていくというお仕事もすごく楽しいな、と思ってやってみることにしました。


振り返ってみたら、原動力として「子どもたちを救いたい!」みたいな気持ちはあまりなくて、それよりも、「子どもたちの素晴らしさを大人に伝えるということをやっていきたいな。」という気持ちの方が大きかったですね。




ー子供を取り巻くプロフェッショナルってたくさんあって「子どもを助けたい」というモチベーションで動かれている方もたくさんいると思うんですけど、由佳子さんの場合は、前提がすでに『子ども=生まれた時にありのままで完璧な存在』ということなんですね。


そうですね!「子どもたちは大丈夫。」って現場で働く中でも感覚的に常に感じていました。なので、今はママ向けに講座をやっているけど、何かを伝えたいのは子どもに対してではなく大人になんですよ。「子どもたちは何があっても大丈夫!」というような確信があるので。


実際、子どもたちが『ダメ』になっていくのは、大人から見て望ましくない子どもの一面に『悪い』というラベルを貼って、そこばかりに注目していく時なんです。残念なことに、大人が「ダメな所を直さなくちゃ!」と接してしまうことで本当にそうなっていくという事例もすごくたくさん見てきました。だからこそ、子どもたちと関わっていく大人の方の視点をシフトしていかなければならないと思っています。


親になる人はきっと最初は誰しも「自分ががんばらなきゃ。」って思うと思うし、私も「こうしなければならない。」という思考がないわけではなく、そのこだわりがあること自体がいけないわけではないとは思います。でも、幼児教育の視点を学ぶことで「これは生き方に通じることなんだな。」と気がついたんです。目の前にいる人を尊重する、相手の立場に立って考える、その人の美しい輝く部分に目を向けて関わっていくというのは、子どもだからとか大人だからと関係なく、その人の周りの人全てに対する生き方やあり方そのものだと思います。




ー私の中での以前の由佳子さんのイメージは、自分のやりたいことがはっきりしていて真っ直ぐで、海外での勉強も仕事もバリバリやっていて優等生って感じでしたが、最近はより自然に、感覚に素直に軽やかに自分のやりたいことを追求されているように感じます。ここ数年で何か気持ちの変化があったのでしょうか?

ターニングポイントは、完全に2019年の流産ですね。

一人目出産後数年経ってからだったんですけど、回復するために休んでいた時に、ふと「自分の感情や心の声に蓋をして突き進んできたのではないか?」と感じとったんです。


その頃、胎内記憶とかの本を描かれている池川明さんの著書をたくさん読んでいたのですが、その中で「全ての魂や赤ちゃんは、お母さんにメッセージを伝えるためにきてくれている。」というようなお話が書いてあって、私にとってのそれは「もうちょっと、今目の前にいる人たちを大切にしなさい。」という去っていった赤ちゃんからのメッセージなんじゃないかな、と。


その頃、お友達に教えてもらって瞑想を始めたりもしたのですが、その中で、やっぱり無意識のうちにでも自分の感覚や感情を蔑ろにしてきたのかもしれないと気がつきました。


それまでやってきたことや仕事に関しては、本当に嘘はなくやりたいからやってきたので、全く嫌ではなかったけど、もっとスローダウンしてもいいのかな、と。論理的な左脳的な部分ばっかりではなく、「本当に大切なことはなんなのか?」ということを、より右脳サイドの感覚的な部分で感じていきたいな、と思ったんです。

そこから、「この資格が必要」とかではなく、より感覚的に直感を使いながら「やりたい」「やってみたい!」という気持ちに忠実に物事を選べるようになった感じがしています。



Asian woman in Okinawa
流産後、心の赴くままに沖縄へ一人旅に向かったという由佳子さん


ー由佳子さんが幼児教育や自分の子育て経験を通じて伝えたいこと、世界にこのメッセージだけは残して死にたい、と思うことはなんでしょうか?



子どもたちの持つフィルターを通して、世界を一度見てほしいな、というのはあります。

自分自身も昔は子どもで同じ所を通ってきたんだから、子どもの世界を見ていることで、自分の中にもそういう『美しい』とか『面白い』という世界観があるんだ!と思い出せるんじゃないかな。そうすることで、肩の力が抜けて「私が何かをしてあげなくちゃ!」とか「良い子に育てないと!」というようなと思考から解放されると思うんです。


お母さんたち、そこまで頑張らなくてもいいんだよ、と言いたい。

『私がいるから子どもがいる』でもないし、『子どもがいるから私がいる』でもない。

『私がいて、子どももいる。』というフラットに受け入れられ尊重しあえる関係がいいなと思っています。


もし明日死ぬかも、と思ったら「一度きりの人生、一緒に楽しもうよ!」と言いたいですね。






『ママ革命』プログラムお申し込みページ

(※2023年4月24日から28日までの限定公開です)


 

編集後記


由佳子さんの『子育ては教育ではなく人間関係』という言葉が印象的でした。

お話を聞いていて、子どもたちの可能性を心から信じて接していらっしゃることが、自分自身の可能性への気づきや、ご自身への信頼感にもつながっているのかもしれないな、と感じました。


私も一人の親として、自分の子どもに対して「もっとこんなことができた方が将来いいんじゃない?」という不安が頭をよぎることもあるのですが、こどもの問題を問題と思わないで関わるということができると、もっと心の余裕を持って見守ることができるようになるし、待てることで見えてくるものがきっとあると思っています。


子育ての価値観は、自分の親の価値観を受け継いでいることも多々あるので、私たち親世代が、自分達の価値観を子どもたちの世代の価値観にアップデートすることを意識できることの方が、実は子育てにおいては重要なのかもしれません。


そう思いながら子どもと接していると、確かに子どもから教えてもらうことはたくさんあるのです。私自身は、子育ては自分育てだとも思っています。


由佳子さんは現在、記事の中でも出てきた、子どもとのコミュニケーションのヒントやママたちの心や思考の状態を整えるための『ママ革命』という講座を募集されているそうですので、気になる方は是非チェックしてみてください。



ENVITA編集部


 

<ENVITAの最新情報が週に2回メールボックスに届きます> ウェルビーイングに興味があっても、忙しい中で心を休め、

自分のために時間を取る習慣をつけるのはなかなか大変ですよね? そんなウェルビーイングの習慣を身につけ、

こなさなければならない作業の合間にも少しでもホッとする時間や

心身を整えるヒントをお届けしていきます。






Comments


bottom of page