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着物は、ありのままの自分を全部武器にできる衣装:岡部サラさん

Updated: Jul 29, 2023


 




<プロフィール> オーストラリア、メルボルン在住

着物スタイリスト

岡部サラ オーストラリア、メルボルンを中心に活動する着物スタイリスト 及びビンテージ着物ショップのオーナー。


同じくメルボルン在住の日本人プロフォトグラファーとのコラボレーション企画で、主に七五三、和装結婚式、成人式など、『人生の晴れの日をメルボルンの背景をバックに和装姿で思い出に』というコンセプトで、着物スタイリング&撮影サービスを提供している。


メルボルンの名物的マーケット、クイーンビクトリアナイトマーケットにて毎週水曜日に着物ショップを出店。世界各国の方々に着物を気軽に楽しんでもらえるようなスタイリングの提案をしながら、日本から輸入したビンテージ着物を販売している。

 

 

ーサラさんは着物のお仕事を始めて何年くらいですか?メルボルンで着物スタイリストになるまでの経緯を教えてください。


今、この仕事を始めて9年目になります。


小さいころから絵は好きだったし、物を作るのにも興味がありましたね。高校は、公立高校の工業デザイン科に通っていました。他の学科はほぼ男子校のような感じなのですが、デザイン科だけは45人中37人が女子という環境で、個性的な子も多くて楽しかったです。でも、その頃は今の仕事につくなんて、思ってもみませんでした。


元々、オーストラリアに来たきっかけは、結婚して3〜4年目の頃に、夫が歯科技工士としてオーストラリアで仕事をゲットしたことでした。私たちは2人とも静岡県浜松市の出身なのですが、夫が歯科技工士としてレベルアップするために、大阪の学校に1年通っていたんです。その学校が海外とコネクションがあって、オーストラリアから来ていた求人案件を受けたら受かってしまったので、「いいじゃん!面白そう!」とオーストラリアに来ることになりました。


渡豪1年目で一人目の子どもが生まれ、最初はバタバタと過ぎていきました。そして、2人目が生まれ、まだ小学校に上がらないくらいの歳のころに、友達から「着物着せられる?」とちょこちょこ頼まれるようになったんです。


着物で仕事しようと思ったきっかけは、ぶっちゃけ成り行きです(笑)

「着物文化を世界に広めてやろう!」みたいな野心は最初のうちは全くゼロで、好きなことを楽しんでやっていたらこうなっちゃった、という感じなんですよ。


自分が着物が好きで着ていて、友達に「私着付けできるよ〜。」って言っていたら、「あ、じゃあやって欲しい!」とか「これもできる?」という感じでリクエストが来るようになって、それに応えていたら「こういう仕事もできるよな?」と思い始めて。


でも、仕事にするなら、趣味でやっている程度の知識やスキルじゃダメだよな、と思い、日本に帰って、着付けの先生にきっちり3ヶ月くらい通って着付けを習った後、メルボルンで『着物スタイリスト』として開業しました。



着付師
着物の着付けをされるサラさん


ー海外で着物の着付けができる人って珍しいと思うので、起業当初から結構需要はあったのではないですか?


お仕事が忙しくなり始めたのは、メルボルン在住の日本人フォトグラファーのりなさんと一緒に七五三撮影のイベントをやり始めた頃からです。以前、海外で七五三撮影をやっている人の写真を何回か見たことがあって、失礼なんですけど、なんだか「日本に帰れないから妥協したレベルの写真」にしか見えなくて…私はそうじゃなくて、「日本に帰らなくてよかった!」と思えるくらいの写真にしたいなと思ったんですよね。


七五三だと、3歳の時に来てくれた子がそのあとまた5歳、7歳の写真を撮りに来てくれたりして、よそのお子さんの成長も見られるところが楽しみでもありますね!



七五三フォト
七五三の着付けをされるサラさん

ーうちの息子も3歳の時に撮ってもらいましたけど、本当に素敵でした!では、サラさんが思う着物の魅力ってなんですか?


もともと、若い時からファッションには興味があったんですね。特に50年代のアメリカのビンテージファッションとかが大好きだったんです。でも、オードリーヘップバーンみたいな「ボン、キュッ、ボン!」なスタイルが可愛いな〜!と思っても、体型が全然違うから日本人の私がどう努力しても、ことごとく似合わないんですよ(笑)顔が違うのはもうしょうがないんですけど、どうやっても私が「カリフォルニア生まれのキャサリン」にはなれないと(笑)そこで、どうしたもんかな、と思っていたわけです。


その頃、ちょうど、バックパッカーとしてインド旅行に行ったんです。その時に、ガンジス川沿いで、インドの民族衣装のサリー姿で洗濯している女性たちを見かけて、それほど裕福そうではなかったけれど、「すごく美しい!」と感じたんです。その時に「民族衣装って女性をこんなに素敵に見せてくれるんだ!」と閃きました。


そこで、それまで着物のことなんて全く知らなかったのですが、日本に帰国してからすぐ、独学で勉強して着物を着始めました。そうしたら、洋服の時とは違って、何も努力しなくてもピタッと全てがハマる感覚を得たんですね。「民族衣装って、こんなに自分にぴったり来るんだ!」と驚きました。「自分は何も変わらなくてそのままでいいのに、勝手に似合ってくれるなんて、なんて便利なんだ!」と(笑)


じゃあ、その「似合う着物」を土台に、自分が好きなアメリカンテイストをいれていけばいいんじゃん、と思って取り入れ始めたら、それが自分の中ですごくしっくり感を得ることができたんです。そこからずっと着物熱が冷めず、って感じですね。


着物って、実は、日本人にとっては「ずるい衣装」なんですよ(笑)なぜかっていうと、まず、年齢から逃げなくていい。年齢を重ねれば重ねたなりに、着物姿も美しく見えるんですよね。


洋服だと「若い人の服」は歳を取ると似合わなくなったり、着られなくなる、というようなこともありますが、着物は、どんな年齢でも、背骨が曲がっても、首の周りに皺があっても、ありのままの自分の美しさを全部武器にできる衣装なんです。

体型だって、お尻が小さくても、なで肩でも、ジム行かずに怠けた体であっても、それなりに美しく着こなすことができます。


最初の初期投資は少しかかるけど、まずはワンセットあればいいし、着こなしのアレンジがきいておしゃれ感もあるから、本人はズボラでも「美意識高いおしゃれさん」って見られますからね(笑)やっぱり、かなりずるいですね(笑)




ーサラさんの着物スタイリングはとても斬新で可愛いものも多いですよね!そのアイデアやインスピレーションはどこから来るんですか?


日本に帰った時にコラボをしている小舟さんとの撮影の時は、結構自由にやらせてもらえるので、なんでもありの自己表現のような感じです。まずは、「アメリカ風な竜馬」とか事前にスタイリングのテーマを決めて、それに合わせて、小舟さんが持っている小物でアレンジしていく感じですね。


でも、七五三撮影の時は、自分の個性を出しすぎないように抑えていて、もっとトラディシナルな感じで仕上げています。TPOを考慮して、その時々で調整していますよ。



着物を着た女の子
小舟さんとのコラボ撮影でのスタイリング。個性が光る!


ー日本人でも、今はどんどん着物を着なくなってきていますが、海外の人との感覚の違いとか、サラさんが思う着物の未来展望とか、こうなって欲しいな、みたいなものはありますか?


もう、早くお端折り(着物の帯のあたりで着丈の余分な布を折り返した部分)は退化してほしいと思ってますね(笑)お端折りって元はなかったもので、江戸時代ぐらいにできた習慣というか、着方なんですよ。経済が安定してきて、町人の中にも富裕層が出てきたことによって、布をふんだんに使えることが裕福であることのアピールになっていたんですね。その頃は、帯もワイドになってきたりとか、経済的な背景がファッションにも影響を与えていたんです。


でも、それって今のエコとかSDGsの流れにも全然合っていないし、機能的には全く必要のないもので、逆に着付けが難しくなってしまうというデメリットがあります。


そもそも江戸時代以前は伝統ではなかったのに、それが今「着物とはこういうもの」という風に決めつけられていて、逆に着物を着ることへのハードルを高くしてしまっている気がします。だから、お端折りがなくなっていったら、もっと今の時代にあった着物のスタイルになるんじゃないかな?って思っています。 江戸時代まではずっと、着物もその時代背景に合わせて変遷してきているのに、なぜか江戸時代から今までは止まっちゃっているので、「そろそろ時代に乗って、変化して行こうよ!」って言いたいですね。しかも、お端折りなんてもともとはジーパンに入れたTシャツの裾くらいの扱いで、しわが寄ってても全然良かったんですけど、1960年くらいから「お端折りのしわはぴっちり取らなければならない!」とか誰かが言い出しちゃったもんだから、余計着物へのハードルが上がってしまいました。これだけ着物人口も減っている時代に「そこで論議している場合じゃないんじゃない?」と私は思ってしまいます。


海外の人はそういう縛りがないから、着方も自由なんですよ。例えば、あるおばあちゃんが、袴の紐を肩で縛ってジャンパースカートみたいに着たりしていて。すごく可愛いですよ!「着物はこうでなければならない」という枠を超えてくるので面白いです。私も、子ども用の袴をキュロットみたいにして履いたりしたこともありますし、海外の人は固定概念がないから、とても刺激を受けています。そういった、発想の転換があれば、みんなが着物をもっと楽しめるようになるのではないかと思いますね。




ー面白いですね!では、着物の仕事をしていて、今までで一番驚いた経験、勉強になった経験はなんですか?


そうですね〜…日本人であれば、着物を自分で着られないとしても「着付け」というものがあって、いろんな紐を巻いて、30分くらいはかかるんだぞ、大変なんだぞ!みたいなのはなんとなく知ってるじゃないですか?

でも、海外の人は「着付け」という技術自体を知らないので、値段に疑問を持たれることはあります。「着付師」という存在を知らないので、「なんで着物着せるだけでレンタル料も入ってないのにこの値段なの?!」みたいに聞かれることは度々あります。「着付師」という職業自体を説明することから入らないといけない時も結構あるので、それはちょっとチャレンジではありますね。



成人式の撮影。サラさんの着付け&スタイリングはもはやアート。


ーここ数年ではコロナ禍もありましたが、他には大変だったことはありますか?


基本は楽しくやってるんですけどね、夜のマーケットにお店を出したり、着物を搬入したりとか体力的には大変なことはあります。実はわたし、あまり人がいっぱいのところが好きじゃないのに、マーケットとかは接客もしないといけないし、それで結構気疲れとかもしますね。

今使っている倉庫兼スタジオなんですが、実は、契約して次の日にロックダウンになったんですよ。それまでは、人のうちのガレージを借りて着物を置かせてもらっていたので、人に見せられる状態ではなくて。でも、ロックダウンのうちにスタジオの内装とかもゆっくりできたので、逆に良かったかもしれません。今はそのおかげで、ショップや撮影スタジオとしても、イベントの場所としても使えているのでとても気に入っています。




ーでは、最後に、サラさんがこれからやってみたいと思うことを教えてください!


いつか本を出したいな。今まで経験した海外珍遊記的な内容で、いろんなお客さんのツッコミどころ満載なエピソードを紹介したいな、と考えています。




ーそれは絶対読みたいやつです!(笑)楽しみにしています。今回はありがとうございました!






 

編集後記


サラさんとは、息子の3歳の七五三撮影の時に初めてお会いしてからのお付き合い。そんな息子も今年10歳になります。


その後、私も自分で着物を着れるようになりたい!と、サラさんから着付けの基本を学びましたが、サラさんは、ただ「正しい」着付けを教えてくれるのではなく「楽しく、無理なく、着続けられる」ための着付けスピリットを一緒に教えてくれていると感じました。


着物が大好きで、着物文化の将来のことも海外からの独自の目線で捉えているサラさん。積極的に、日本の着物ショップや写真家さんとのコラボもされていて、日本にもファンが多い。ご自身でもお写真を撮られるなど、多彩さを発揮されています。


たまにFacebookに、投稿されている「七五三あるある」や「海外着付けあるある」のエピソードがまた面白くて、サラさんのユーモアと人柄、着物への愛が、スタイリングの技術以上に愛されている理由でもあるんだな、と感じています。


私自身も、海外に来てから墨絵や花道などをはじめ、日本の伝統や美学に魅力を再発見した一人です。これからも、着物文化をさらに進化させ続けるサラさんのご活躍から目が離せません。



ENVITA編集部


 

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